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2015.03.19
私は、弁護士による法曹人口・法曹養成問題についてのメーリングリストの管理をしているのですが、先日、60期台中盤の弁護士から弁護士登録を抹消することによるメーリングリストからの退会の申入れがありました。
その方によれば、弁護士登録を抹消する決断に至るまでには、様々な葛藤があったそうです。その背景には、当然、弁護士激増に伴う弁護士の厳しい環境が根底にあったとのことでした。
(※ブログに掲載することについては、ご本人からご承諾を得ております。)
その他にも若手・中堅の弁護士が次々と弁護士登録を抹消されています。
中には、弁護士登録抹消の理由として「仕事が激減している」ことを真正面から挙げた方もおられました。
登録を抹消請求される弁護士をすべて存じ上げているわけではありませんが、同業者から見ても資質に問題のない方も多いようにです。
人間は、とかく見栄を張りたい存在で、真実から目をそらしたい気持ちを抑えて率直に退会理由を言われる弁護士には心から敬意を表したいと思います。
司法改革では「弁護士が過当競争をして淘汰されても、それで悪い弁護士が淘汰されるのだから、構わない。」などといったことがまことしやかに言われました。
しかし、営業力がある弁護士が必ずしも良い弁護士とは限りません。
同業者では「弁護士としての資質と営業力は反比例する」とも言われるくらいです。
というのも、弁護士の利用は、一生に一度あるか否かであり、病院や医師のように何度も反復・継続的に利用するわけではなく、また、内容が専門的で弁護士の発言が正しいかどうかの判断が難しい上に、利用者は利用した事実を他人には言いたくないため、口コミで評判が広く知れ渡ることもないからです。
また、近年の弁護士は、「法科大学院修了」という参入障壁が設けられており、法曹になった時点で奨学金や生活費等の多額の借金を抱え、マイナスからのスタートとなっています。
上場企業には、既に100%近くの会社に顧問弁護士が就いており、新規登録弁護士が顧問先を開拓すると言っても限りがあります。
弁護士登録をした時点で既に大きな格差が生じています。
自由競争など成り立ちえないのです。
坂野真一弁護士も指摘されていたと思いますが、司法改革で成功した例を挙げて制度を論じても、検証にはなりません。
法科大学院を卒業しても司法試験をあきらめざるを得なかった人、3回との回数制限で司法試験を受けられなくなった人や請求による弁護士登録の抹消請求をせざるを得なくなった人の声をこそ法曹養成制度改革顧問会議の委員等に聴いて戴きたいと思います。