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2015.04.20
法曹養成制度改革推進会議の諮問機関でも日弁連でも「法曹有資格者の活動領域の拡大」について議論されています。
「『弁護士』の活動領域の拡大」ではなく、「『法曹有資格者』の活動領域の拡大」としているのが「ミソ」です。
これは、「弁護士」としての活動領域の拡大は存在しないことが社会的に認知されたことを意味します。だから、「弁護士の活動領域の拡大」ではなく、「法曹有資格者の活動領域の拡大」なのです。ちなみに、以前は、「弁護士の活動領域の拡大」と言われていました。途中から「法曹有資格者の活動領域」に変わったのです。
そして、「弁護士」としての活動領域の拡大が見込めなければ、司法試験合格者数を増やす正当理由がなくなってしまいます。そこで、新たに「『法曹有資格』の活動領域の拡大」という概念を作り出して、「それでも司法試験合格者数を増やす必要がある」と持って行きたいのです。
論理のすり替えです。
この「法曹有資格者の活動領域の拡大」の内容ですが、任期付公務員や企業内弁護士、或いは、国際業務等が主に念頭におかれているようです。
「法曹有資格者」があちらこちらに配置されているのが良いのだそうです。
「弁護士」とは異なり、「法曹有資格者」という概念は実に曖昧です。
日弁連は、「法曹有資格者」について、司法試験に合格し、司法修習を経て、弁護士登録をしている人」と「認識」しているとのことです。
しかし、これは、あくまでも「日弁連の認識」に過ぎず、一般には、「司法試験に合格した人」として用いられています。
司法試験を合格して、企業法務等の職に一定期間勤務すれば、司法修習にいかなくても弁護士登録が可能です(弁護士法第5条2号以下参照)。
司法修習に行かなくても弁護士資格を取得する道が法改正により既に開かれているのです。
また、「法曹有資格者」は弁護士登録も要件とはされません。
弁護士登録をしていることが「法曹有資格者」の要件というのであれば、端的に「弁護士の活動領域の拡大」と言えば良いのであって、わざわざ「法曹有資格者」と言い換える必要がありません。
一般に議論される時、「法曹有資格者」の概念について、日弁連の「認識」は問題になりません。議論する際、いちいち言葉の中身を確認しながら議論することは通常あり得ないでしょう。
それでは、日弁連は、何故「法曹有資格者」の概念につき、司法試験を合格し、司法修習を経て弁護士登録をしている人との「認識」との建前を崩さないのでしょうか。
それは、「法曹有資格者」との概念がきわめて危険な発想であること、そして、一般に「法曹有資格者」と言う言葉が用いられる時に日弁連の「認識」とは異なった意味で用いられていることを誰よりも日弁連がよく認識しているからだと思います。