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「法曹有資格者の活動領域の拡大」に潜む危険

2015.04.22

 

 「法曹有資格者の活動領域の拡大」における一番のリスクは、弁護士自治の崩壊を招きかねないということです。

 弁護士自治とは、弁護士が権力による干渉をされることなく、運営・懲戒権を自ら行うことを意味します。弁護士会は、監督官庁を持たない唯一の民間団体です。司法書士会・税理士会・公認会計士等他士業は監督官庁の監督の下にあり、自治は認められていません。
 
 弁護士に自治が認められているのは、弁護士が基本的人権の擁護と社会正義を追及するにあたり公権力と対峙する場合があるからです。司法は、立法や行政等による多数支配から零れ落ちた少数者の人権を国家を相手に身体を張って護ることがあり、その際、弁護士が監督官庁を通じた不当な圧力を受けるリスクがあるようでは、弁護士業務に対し萎縮的効果をもたらします。そのため、そのような心配をしなくとも弁護士業務を遂行できるよう、弁護士の独立及び弁護士自治が制度的に担保されているのです。

 逆に言えば、弁護士自治が認められない弁護士制度は、その基本的使命を果たす制度的保障に欠けるということになります。

 ところが、弁護士登録をしていない「法曹有資格者」は弁護士自治の埒外です。

 弁護士会は、弁護士登録をしていない「法曹有資格者」の監督はできません。弁護士登録を有しない「法曹有資格者」を懲戒に付すことはできないからです。
 
 また、弁護士自治を果たすためには、ある程度、弁護士の間に共通認識・共通常識が存在することが望ましいと言えます。しかし、法曹有資格者の活動領域を拡大し、本来的な弁護士以外の業種を行う「法曹有資格者」が増えてくると共通認識や価値観を持つことが困難になります。弁護士登録をしている者の間でも格差が拡大し、共通の価値観を持ちにくくなっています。ましてや、弁護士登録をしない「法曹有資格者」と弁護士との間の価値観の違いたるや相当に落差があります。
 このような意味合いにおいても「法曹有資格者の活動領域の拡大」は、弁護士自治の基盤を弱体化させることにつながると思います。

 「法曹有資格者の活動領域の拡大」は、弁護士自治の障碍となり、弁護士自治にとって脅威になりかねないのです。
 
 このような危険をよくわかっているからこそ、「法曹有資格者」は「弁護士登録をしている」との建前を崩したくないのです。

 しかし、当たり前のことですが、日弁連も「法曹有資格者」の中に弁護士登録をしていない者が含まれ得ることを認めています。

 「法曹有資格者」=「弁護士」ではなく、「法曹有資格者」>「弁護士」であるのに、「法曹有資格者の活動領域の拡大」を語る時、あたかも「法曹有資格者」=「弁護士」であるかのごとく、概念を場合により使い分けるのは、誠実な方法とは思えません。

 しかも、弁護士自治への障碍・脅威であることを認識しつつ、そのリスクを最小或いは、存在しないかに見せかけようとするのは悪質であるとの批判を免れないと思います。

 

 

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