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2015.05.31
平成27年5月22日付「法律新聞」(第2094号)弁護士武本夕香子「寄稿 『日弁連の2015年会務執行方針に物申す』より引用
「 また、司法改革により弁護士の未来が失われ、活動領域の拡大は見込めず、就職先はなく、弁護士の経済的基盤が失われ、法曹志願者が激減し続けている現実を前にして、司法改革を進めながら、いかにして「司法と弁護士の未来を切り拓」いていけるというのでしょうか。第5項は、表題と中身が合致していません。」
第2 各論について
各論については、「司法試験合格者の1500名への減員」の政策の取り扱われ方について指摘させていただきます。
法曹人口問題は、司法制度、弁護士制度の根幹をなす政策です。
法曹人口を何名とするかにより、その後の司法制度や弁護士制度のあり方が決まると言っても過言ではないでしょう。
法曹人口の数により法曹養成制度のあり方も異なってきます。
ところが、この会務執行方針の各論では、法曹人口問題は法曹養成制度改革の中の1項目としてしか扱われていません。
前述したとおり、法曹人口問題の方が、むしろ法曹養成制度を包摂する関係に立つにもかかわらずです。
法曹養成制度改革の中に司法試験合格者数の政策が含まれるとの包摂関係には、一定の意図が含まれていると受け取られかねません。
なぜなら、司法試験合格者数が法曹養成制度改革の中で扱われる時、司法試験合格者数は、法科大学院存続のために何名が望ましいかとの文脈で語られることが多いからです。
ちなみに、各項目の表題を並べると、いかに司法試験合格者数、法曹人口問題が極小化して扱われているかがわかります。
会務執行方針は、
「第1 身近で使いやすい司法の実現」
「1 司法基盤の整備」
「2 司法アクセスの改善」
「3 広報活動の強化」とし、
「第2 活動領域の拡大」
「1 高齢者・障がい者のある人などへの支援及び福祉分野」
「2中小企業支援」
「3 海外展開の推進」
「4 行政連携の強化」
「5 組織内弁護士の採用拡大」
「6 隣接士業問題への的確な対応」とし、
「第3 法曹養成制度改革」
「1 法科大学院の改革」
「2 司法試験の改革」
「3 司法試験合格者の1500名への減員」
「4 司法修習の充実」といった具合に項目立てされています。
この項目立てを一覧するだけでも2015年の日弁連の会務執行方針が司法改革による弊害を無視して司法改革を進める方向であるかがよくわかります。
今日弁連に必要なことは、平成12年11月1日、日弁連臨時総会でいわゆる3000人決議が可決されて以降、この15年間、司法改革を進めてきた結果、司法と弁護士の未来が失われてきた結果を真摯に受け止めることです。
そして、法曹としての責任感を持ち、司法改革による社会的弊害を取り除くべく努力をし続けることだと思います。
司法改革を進めても社会的弊害が増大するばかりであること、日弁連が司法改革の抜本的な是正を始める以外に司法と弁護士の未来を切り拓く道はないことは既に実証されているのですから。
論語で孔子も言っているではないですか。
「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」
一刻の猶予もありません。
明日からでも、否、今日からでも180度舵を逆の方向に切り、日弁連が一丸となり司法と弁護士の未来を切り拓いていくべき時が来ています。
「過ちては則ち改めるに憚ること勿れ」
日弁連の会務執行方針を改めるに憚る必要はないと思います。
以上」