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2015.06.11
法曹養成制度改革推進室が平成27年5月21日に「法曹人口のあり方について(検討結果取りまとめ案。以下、「本取りまとめ案」と言います。)を公表しました(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hoso_kaikaku/dai20/siryou5.pdf)。
本取りまとめ案は、「内閣官房法曹養成制度改革推進室において行った調査により判明した法的需要の状況及び弁護士の活動状況に照らすと、法曹人口は、全体として今後も増加させていくことが相当である」から始まります。
私も推進室が行った調査結果(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hoso_kaikaku/dai19/siryou4.pdf)を拝見しましたが、調査統計結果のどこをどのようにひっくり返してみても「法曹人口は、全体として今後も増加させていくことが相当」などといった結論に導けるものではありません。
ある程度偏波な結論は、文部科学省の権限の強さ及び法科大学院関係者が多数顧問会議の委員に入っているので、当初から予想されていました。
それにしても「1500人程度は輩出されるよう、必要な取り組みを進め」るべきなどといった結果は、あまりにも酷すぎると思います。
この文面は、本取りまとめ案に「引き続き法科大学院を中核とする法曹養成制度の改革を推進するとともに」との記載及び「輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものでない。」との記載内容と合わせると、法科大学院制度を保持するためには、最低でも司法試験合格者数を1500を確保すべきで、1500人以下には減らしてはいけないということが言いたいのでしょう。
本取りまとめ案は、日弁連の「まず1500人にまで減員し,更なる減員」もと言う法曹人口政策に関する提言(http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2012/opinion_120315.pdf) と言う内容とも似て非なるものです。
日弁連の上記提言は、すぐに1500人を実現して、更なる減員をも考慮すべきとのことで、1500人以下にすることが当然の前提となっているからです。
司法制度改革審議会の意見書を見た時と同じ感想が頭をよぎりました。
ここまで統計結果と矛盾する非論理的・非合理的な結論を導き、公に公表することに常識人としての恥じらいは感じないのでしょうか。
推進室が行った統計は、質問事項や回答割合についても偏頗な内容が含まれていますが、それでも法的需要が増加するとの根拠は見いだせません。
訴訟事件数は減少の一途を辿り、平成15年と比較して半減しています。
法曹有資格者を雇うことについては、大企業(76%)も中小企業(98%)も否定的回答が大半占めています。弁護士の所得も半減しています。
調査結果を虚心坦懐に見れば、法曹需要は増加するどころかむしろ減少することが明白となっているのです。
調査結果のどこのどのような統計をもって「法的需要及び弁護士の活動状況」からして「法曹人口は、全体として今後も増加させていくことが相当」と結論づけられるのかを示していただきたいものです。
法科大学院は、現在、発足した74校のうち、既に27校が学生の募集停止を公表しています。
たったの12年で実に3分の1以上が破綻している制度は、過去類を見ないでしょう。
法科大学院志願者は、平成18年以降、右肩下がりで減少しています。
実際、弁護士資格を取得してまもなく弁護士登録を請求により抹消する人も増えています。
弁護士の職業的魅力は、あくまでも最低限の文化的生活が保持できていることが前提となっているはずです。
家族も養えないのに、どうやって他人の人権や正義を守れるのでしょうか。
現在のように弁護士の経済的基盤が失われ、給与が支払われるあてもなく、独立しても赤字経営が見込まれるのに誰が学費と生活費を捻出して、長い年月を掛けて法曹を志望するというのでしょうか。
以後も学生募集の停止を決める法科大学院は、益々増えると思います。
法曹の給源の多様性という建前で法科大学院制度が創設されましたが、志願者そのものが激減し、今や非法学部出身者や社会人経験者の割合は、旧試験の時の割合よりも少なくなっています。
破綻必至の法科大学院制度を未だに「中核」とすることに、何の意味があるのかが分かりません。
恥を知らない偉い方が世の中を動かしていることが一番の問題なのではないかと思います。