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2015.07.13
6月30日付けで法曹養成制度推進会議(以下、「推進会議」と言います。)は、法曹人口の在り方について、「司法試験合格者数を1,500人以上は輩出」されるべきとの推進室作成の意見書通り取りまとめることを決定しました。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hoso_kaikaku/dai3/siryou2.pdf
冒頭には「内閣官房法曹養成制度改革推進室において行った調査により判明した法的需要の状況及び弁護士の活動状況に照らすと、法曹人口は、全体として今後も増加させていくことが相当である」と結論づけています。
推進室の統計調査や弁護士の実態を見ずにこの文章だけを見ると、あたかも法曹需要が溢れていて、弁護士が活発に様々な分野において広範に活動を繰り広げているようです。
しかしながら、推進室の統計調査のどこをどのようにひっくり返しても法曹需要があるとの認定は不可能です。
例えば、76.2%の大企業、98.1%の中小企業において「法曹有資格者を採用していないし、今後も採用する予定はない」と回答しています。自治体の70.8%が「自治体害の弁護士への相談の回数を今後増やすことを望むか。」との問に対し、「70.8%」の自治体が「現状の相談回数で不都合を感じていないので、相談回数を増やすこと」を望んでいません。
新受事件数は、どの事件においても減少傾向が見られますし、一括登録日における未登録社数は、平成19年の時には、102名だったのが平成26年には、550名と約5倍に増えています。
しかし、推進室の行った統計調査とその引用の仕方には、統計のマジックが用いられています。統計結果の引用の仕方により、実際には、存在しない需要について、存在するかのごとき「見せ方」がされているです。
「市民のニーズ」のところで、「「過去5年間で経験したトラブルで弁護士への相談を考えたことがあるか。」との問に対し、「考えたことがある」と回答したのは20.7%」で、このうち「依頼しようと思ったが、結局依頼しなかった」と回答したのは、54.7%」との回答があります。弁護士の相談を考えたか否かを問いかけられた人のうち、実に「54.7%」が結局依頼しなかったと聞かされると、あたかも回答者の半数以上が弁護士への相談需要があるように見えます。
しかし、実際には「考えた」ことのある「20.7%」のうちの54.7%なのですから、全回答者の1割程度の相談需要の可能性があったに過ぎません。しかも、その方々は結局弁護士に相談しなかったのですから、本当に需要があったとも解されません。本当に弁護士への相談が必要な人は、市役所の無料法律相談等で必ずといっても良いほど相談氏に来られているからです。
また、事件数についても事件が既に終了した件数(既済事件数)がもっぱら引用されています。
法曹需要を見る際、事件数の推移としてはもっぱら新受件数のみに着目しなければならないはずです。既済事件数の推移は、新受件数が少なくて裁判官や弁護士が暇であれば、新たに起こされる事件数が少なくても事件をたくさん終了させることができるので、需要が少ない方が逆に既済件数は増えます。
既済件数のみを見ていると需要が増えますので、実際には、法曹需要が減少していることが覆い隠されることになります。
要するに、推進室の行った調査結果は、「法曹需要ありき」「弁護士増ありき」の統計結果であり、いかに法曹需要が多いかを見せようと様々な工夫がなせる技が用いられるのです。
そのような統計を行い、統計自体を見て詳細なチェックをする人がいないだろうということで、「調査により判明した法的需要の状況及び弁護士の活動状況に照らすと、法曹人口は、全体として今後も増加させていくことが相当である」などと結論づけるのですから、これほどの茶番劇はありません。
司法制度や我が国の社会をいかにすれば良くできるかについて、真剣に考えれば、このような不誠実なことはできないはずだと思います。