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「質の高い法曹」「法曹の質」の意味するものは?!

2015.07.27

 

 法曹養成制度改革推進会議の「法曹養成制度改革の更なる推進について」第2項「今後の法曹人口の在り方」の短い文章の中において、「質の高い法曹」という言葉が2回、「法曹の質」の「確保」という言葉が2回繰り返されています。

 ちなみに、「法曹養成制度改革の」『更なる推進』について」という題名からして、司法改革を進める決意が明確に示されており、その反省のなさを物語っています。
 しかも、日弁連の会務執行方針と同じく、法曹養成制度の中で法曹人口問題が項目建てされています。これは、日弁連の会務執行方針で述べたと同じく、政府が法科大学院存続の中でのみ、法曹人口問題が検討されていることが明白です。

 横道に逸れてしまっているように見えますが、同じことがこの「質の高い法曹」という言葉と「法曹の質」の「確保」という言葉の繰り返しにも言えます。
 このような短い文章の中で言うべきことはたくさんあるはずなのに、また、この文章を考えた官僚は、言葉の専門家であるはずであるにもかかわらず、何故このような陳腐な言葉を繰り返し使うのでしょうか。
 
 それは、この「今後の法曹人口の在り方」の中でも、法科大学院制度を死守しなければならないとの決意を高らかに表明したいからなのです。
 すなわち、この「今後の法曹人口の在り方」の中で、あくまでも法科大学院制度を前提とした法曹人口であらねばならないということが言いたいのだと思います。

 繰り返し使われるこれらの言葉を「法科大学院生」ないし「法科大学院制度」という言葉に置き換えれば、この文章の言わんとすることが良くわかります。
 
 「今後もより多くの『法科大学院生』が輩出され、活躍する状況になることを目指すべきである。」

 「多くの『法科大学院生』が司法制度改革の理念に沿って社会の様々な分野で活躍する状況になることを目指すべきである。」

 「法曹養成制度が『法科大学院制度』を確保しつつ多くの法曹を養成することを目的としていることに鑑み、排出される『法科大学院制度』の確保を考慮せずに達成されるべきでないことに留意する必要がある。」
 
 このように言葉を置き換えると、この「今後の法曹人口の在り方」で分かりにくい文章が非常にわかりやすくなったと思います。

 しかしながら、司法制度は、法科大学院制度のためにあるのではありません。

 司法制度には、国家の統治機構の三権分立の一翼を担い、市民の人権保障の担い手としての役割があるのです。
 法科大学院制度のための司法制度となってしまったのでは、このような司法制度の役割を果たすことができなくなってしまいます。

 本当に残念なことです。
 

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