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法科大学院制度のための司法改革であってはならない

2015.08.05

 

 平成27年6月30日の法曹養成制度改革推進会議の「法曹養成制度改革の更なる推進について」との題名自体が法科大学院制度を新設した法曹養成制度を益々進めていくことを前提としたものになっています。

 法科大学院新設の際には、ほとんど議論などなされませんでした。
 文科族の国会議員からも伺ったことですが、「一夜にして法科大学院新設が決められた」のです。

 これは、日弁連の中とて変わりありませんでした。
 平成12年11月1日の日弁連の臨時総会では、法曹人口問題についての議論のみで午後9時を既に回っていました。そして、午後9時30分前後になり、これから法科大学院制度についての議論を始めようとしたときに、合図とともに打ち切り動議が出されました。
 議長は、既にその会員が打ち切り動議を出すことをわかっていたようで、すかさず、その方を指名しました。

 上記臨時総会前の段階では、法曹人口問題は少しは議論されたところもありましたが、法科大学院の議論など日弁連内、各単位会内でも全くと言って良いほど議論されていませんでした。

 「法科大学院など本当にできるはずはないでしょう。」

 弁護士も大学教授も国会議員でさえも口々にしていたほどでした。
 
 ところが、繰り返しになりますが、一夜にして法科大学院は創設されました。

 法科大学院制度新設の理由は、「点からプロセスへ」「予備校主導の暗記勉強による弊害」等紋切型で、しかも、その議論に異論を差し挟む余地は与えられませんでした。
 
 その実、法科大学院制度新設のために、法曹養成は、「プロセスから点へ」と移りました。

 司法改革前には、各大学でゼミや答案練習会を開き、法学指導を行い、司法修習は2年間行われ、その後も法律事務所に就職し、3年から5年間の勤務弁護士経験を経て独立をする、あるいは、即時独立開業しても弁護士会の会員全体で若手弁護士を指導する等手厚く育てていました。
 しかし、今となっては、司法修習は1年間しかなく、しかも、人数が多すぎて以前のような手厚い実務修習など望むべくもありません。また、数年間の勤務弁護士経験をできる人は激減しました。また、中堅以上の弁護士は、精神的・経済的余裕がなくなり、若手弁護士を弁護士会全体で育てるなどといった風潮はなくなってしまいました。

 司法試験問題に対する正解は、大体決まっているのですから、ある程度紋切型の答案になるのは当たり前なのに、あたかもそれが悪いことのように決めつけられ、予備校は悪の権化のように言われました。

 ところが、今では、予備校は、法科大学院受験・予備試験受験・司法試験受験等で隆盛を極めていますが、それに対する批判的意見は以前ほど聞きません。
 法科大学院制度を創設するための単なる方便に過ぎなかったからでしょう。
 
 他方、学生は、高い法科大学院の授業・生活費・予備校の高額化した費用を支払わねばならず、裕福な子弟の割合が著しく増加しました。
 裕福でない家庭の子弟は、法曹になるという道をほぼ閉ざされてしまっているようです。
 
 このような現実を前にしても反省することなく、「更なる推進」をというのですから、開いた口がふさがりません。
 
  


 
 

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