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依頼者保護給付金制度を創設する前にすべきこと

2016.08.27

 

 依頼者保護給付金制度については帯広の岩田圭只先生もブログで記載しておられますが、既に8月6日の段階で読売新聞に掲載されていました。
 ⇒ http://www.iwata-lawoffice.com/wp/?p=3319

 もちろん誰がリークしたかはわかりませんが、弁護士会内部での意見照会をかけたばかりの段階で、すなわち、弁護士以外の人間がこのような情報に接することのない段階でマスコミに報道されたのですから、弁護士(しかも弁護士会の中枢に近い人)がリークしたことは間違いなさそうです。8月6日の段階では、一般の弁護士もこのような制度が日弁連から単位会に意見照会されていることを知らない段階だからです。

 このようにマスコミにリークして既成事実化しようとする手段自体姑息だと思います。

 弁護士等法曹は、適正手続きに対する感覚が研ぎ澄まされていなければならないはずなのに、司法改革の活動や選挙活動等々を見るにつけ、そうでないように思えてなりません。

 ただ、マスコミが情報をリークした人の意図とは違う方向で報道されることも稀にあるようです。

 『羽鳥慎一モーニングショー』では、コメンテーターの菅野朋子弁護士が「こんな制度で信頼回復になるのか疑問」とコメントし、青木理氏も「そもそも弁護士を増やしすぎたことが問題」と発言し、最後は、羽鳥アナが「弁護士さんの収入が減っているという実情が裏にある。弁護士を増やしすぎた、そういう制度の問題点についても考えていかなければいけない」旨発言して終わりました。
 いずれの方のご意見も非常に良識的なものでした。

 この制度は、弁護士数の激増を柱とした司法改革が失敗し、弁護士の不祥事が増えたことから、地に落ちた弁護士に対する社会的信頼を回復するための弥縫策にすぎません。
 
 本来は、司法改革が失敗して弁護士に対する信頼が失墜したのですから、まずは、司法改革を進めた人たちが謝罪し、弁護士会の中枢から身を引き、弁護士会が真反対に舵を切ることを宣言することから先に始めるべきでしょう。

 司法改革を進めた人たちが自分たちの失敗を糊塗するために、小手先で目くらましをしようとしてこの制度を創設しようとしているようにしか見えません。
 なぜなら、普通に考えれば、弁護士の不祥事というのは、市民の人権侵害に直結する重大な問題ですから、まずは不祥事が起きる根本的な原因を究明し、その原因を絶つことの方が重要なのに、そこに手を付けようとしないからです。

 何故、弁護士の不祥事の根本的原因を究明しようとしないかの理由ははっきりしていると思います。

 依頼者保護給付金制度などといった制度を導入しなければならなくなった根本的原因が、『羽鳥慎一モーニングショー』でいみじくも皆さんが口をそろえて発言していた通り、弁護士を増やし過ぎたことにあり、その現実を直視したくないからです。 ちなみに、マスコミの中では、司法改革に対する責任が最も重い朝日新聞にも「経営に苦しむ弁護士の増加が背景にあるとみており」と報道されている通り、依頼者保護給付金制度を進めている人たちでさえ不祥事の原因が司法改革の失敗にあることを半ば認めているのです。

 河野真樹さんのブログ(http://kounomaki.blog84.fc2.com/)でも指摘されていますが、弁護士の不祥事の背景や根本的原因を絶とうとすることなく、依頼者給付金制度のような制度を導入しても、一旦失われた弁護士に対する信頼は回復するものではありません。
 
 弁護士の不祥事をなくすためには、まずは、適正な弁護士人口にして、弁護士が真面目に仕事をすれば、何とか最低限の経済的基盤が保てるようにすべきです。
 
 それまでの経過措置ということで依頼者保護給付金制度を導入するというのであれば、まだ理解できます。
 
 しかし、今の日弁連のように、弁護士人口を増や方向すことばかりに腐心している中で、司法改革を進めた人たちの面子を保つために、真面目に働いている一般会員の会費から不祥事を起こした弁護士の被害者に見舞金を支払うという依頼者保護給付金に賛成するのは難しいと思います。

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