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2016.09.08
明治大学法科大学院の青柳幸一教授による試験問題漏えい事件を受けて、司法試験委員のあり方について法務省のワーキンググループがこのたび提言案を出したとの報道(「司法試験問題作成、大学院教員を除外せず」)がありました。
同報道によれば、同提言案の内容は「来年以降、問題作成を担当する百数十人の考査委員の選任にあたって法科大学院の現役教員を含める代わりに、任期は連続3年程度を上限にする」ことのようです。
cf)http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160907-00050076-yom-soci
法科大学院教授の司法試験問題漏えいは、明治大学の青柳教授が初めてではありません。
平成18年に法科大学院修了生を対象とした新司法試験が開始して翌平成19年度の新司法試験において、慶應義塾大学法科大学院の植村栄治教授が、試験問題類似の問題を学生に教えていた事件が発覚しました。
戦後、旧司法試験が60回以上行われていますが、法科大学院の教授を除いて、司法試験問題の漏えいなどといった事件は一度も起きていません。
ところが、法科大学院修了生が司法試験を受け始めるようになった新司法試験が始まって以来、10年と経たないのに2回も司法試験問題漏えい事件が起きたのです。
「特殊な個人が引き起こした問題」などといったことで片づけられるものではありません。
法科大学院教授による司法試験問題漏えい事件の背後には、司法試験合格率が補助金の増減につながること、廃校に追いやられる法科大学院が激増し、法科大学院の存続が司法試験合格率と直結している等々構造的な問題が潜んでいることは間違いないでしょう。
その構造的な問題を明確にして、その防止策を構築するためにはどうしたらよいかをこのワーキンググループで検討していたのではなかったのでしょうか。
司法試験漏えい防止策としては、法科大学院の教授を司法試験考査委員から外す以外にはないと思います。
司法試験考査委員に現役の法科大学院の教授を入れなくても、法科大学院の教授を務めていない法学部の優秀な教授はいくらでもいます。
何も利害が直結する法科大学院の教授を司法試験考査委員に入れなくても司法試験の運営は十分可能なのです。
「以後は、実際に法科大学院教授が司法試験問題を漏えいすることはないからいいではないか。」というわけにはいきません。
司法というのは、中立公正性が最も求められる職場です。
その司法を担う法曹を選ぶ試験なのですから、「李下に冠を正さず」で他者から疑わしく思われるような要因を一切排除して、信頼回復に努めなければならないと思います。
3年で入れ替わるとしても、利害が結びつきやすい現役法科大学院の教授を司法試験考査委員に入れれば、他者からは不信を抱かれる可能性があります。
これだけ短期間のうちに2度も司法試験漏えい事件が起きたのですから。
法科大学院教授が司法試験考査委員に入れたのでは、司法試験の中立公正性に対する疑念を払拭することはできないと思います。
もう一度言います。
司法試験、司法制度に対する信頼回復のためには、まずは、現役法科大学院教授を司法試験考査委員から外すべきです。
このような結果には本当にがっかりしました。
結局、ワーキンググループといっても、既得権益を擁護するだけの提言しか作成できないというのでは、設置した意味自体問われるべきだと思います。
もっと言えば、そもそもワーキンググループの委員の選任自体に疑念が生じても致し方ないと思います。