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依頼者保護給付金制度とリーガルサポートセンターの制度

2016.09.24

 

 依頼者保護給付金制度の財源は、会員からの会費です。
 
 昨年の日弁連理事会では、依頼者保護給付金制度の予算として「2億から3億円はかからないだろう」という試算が示されていました。
 弁護士1人当たり金2000万円という上限を設けた結果、予算としては年間1億円程度で済むとの試算のようですが、人数等には上限を設けていないので、1億円の範囲内で済むという保証はありません。
 過去懲戒事例に出てきた被害金額は、2012年段階から数億円で、その後、乱高下はあるものの、概して増額傾向が認められます。
 また、そもそも金1億円という試算は、過去の懲戒事例を基にしており、金500万円のお見舞金が出るとなれば、これまで「懲戒申立てをしても被害に遭ったお金は戻ってこないから。」と懲戒申立てをしていなかった事例が全て顕在化することになります。潜在的被害事例が顕在化することは良いことではありますが、予算の関係では、試算した金額を大きく上回るであろうことは、目に見えています。
 
 司法書士が成年後見業務について立ち上げている成年後見リーガルサポートセンターという公益社団法人の場合にも、後見人等候補者名簿登載会員の不誠実行為(横領等)による損害の補償)による財産侵害につき、横領行為等による財産侵害につき1名500万円、1年間最大2,000万円までのお見舞金を支給する制度があります。
 
 日弁連の依頼者保護給付金制度は、リーガルサポートの上記見舞金制度に対抗するものとして考えられたであろうことは、見舞金の額が一致していることからしても明らかでしょう。
 
 しかし、日弁連の依頼者保護給付金制度とリーガルサポートセンターのお見舞金とは、様々な点で大きく異なり、単純に「日弁連でも依頼者保護給付金制度を導入しても良いではないか。」とはいかないと思います。

 まず、第一に、リーガルサポートセンターは、リーガルサポートセンターに登録して成年後見業務に積極的に取り組みたい、リーガルサポートセンターに加入したいという司法書士のみで構成される任意加入団体ですが、弁護士会は、弁護士であれば、例外なく加入を余儀なくされる強制加入団体です。
 リーガルサポートセンターの業務は、成年後見に限られ、リーガルサポートセンターのお見舞金は、リーガルサポートセンターが推薦した成年後見業務に関する不祥事に限られます。これに対し、弁護士の依頼者保護給付金制度は、成年後見業務に限られるわけではありませんし、弁護士会が全く関与し得ない成年後見業務以外の業務についても適用されます。

 リーガルサポートセンターで推薦した成年後見業務については、リーガルサポートセンターの司法書士が2~3か月に一度通帳をチェックして横領事案等がないか常にチェックしていますが、弁護士会には弁護士の業務をチェックする体制はありません。

 リーガルサポートセンターの場合は、2000万円との予算枠(キャップ制)があり、それ以上の被害が出てもお見舞金を支出することができませんが、弁護士会の場合は、財政上の上限枠はあるわけではありません。よって、日弁連の会長が必要と認めさえすれば、予備費からいくらでも追加支出することが可能です。
 「予備費の支出には日弁連理事会での承認が必要である」とか、「財政上の観点から会長が相当と判断した時に限られる」等と言った枠があるとのことですが、日弁連理事会でも日弁連会長にしても同様の被害者を前に「予算を超えたから」という理由で一方の被害者にはお見舞金を出すが、他方の被害者にはお見舞金を出さないということはできないでしょうから、実質的には「青天井」でしょう。
 
 どこをどう考えても賛成し難い制度なのですが、異論なく賛成されていることも多いとの話を聞くにつけ、不思議でなりません。

 本来は、依頼者保護給付金制度に賛成する会員が任意の基金を立ち上げて、そこから出すべきだと思います。

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