最新情報詳細 一覧へ

< 一覧へ

若手弁護士の生活が苦しいというのは都市伝説!?

2016.11.24

 

  アトーニーズマガジン第54号に村越日弁連前会長の言葉として、

 「若手は生活が苦しい、今弁護士になっても食えないというような話が当たり前のように語られますよね。それは大変だと当の若手に聞き取り調査をしても、僕の周りには、そんな弁護士はいませんという返答ばかりなんですよ(笑)。厳しい現実は否定しませんが、ネガティブ情報だけが拡大されて独り歩きしています。」との記事が掲載されているようです。

 この記事を伺い、「裸の王様」の話を思い起こしたのは私一人ではなかったでしょう。

 ご自身のまわりに「王様の政策は正しい。」「巷に言われているような窮状は存在しません。」と言われる方しか近寄ってこられないですから、本当にお気の毒だと思います。

 ちなみに、生活が苦しいのは、何も若手弁護士だけではありません。
 高齢の弁護士や中堅弁護士であっても同様の事態が生じています。

 もちろん一部例外的に高額所得の弁護士が存在することは否定しません。
 誰も弁護士全員が生活に困窮しているなどと言っているわけではありません。
 若手弁護士の中に相当な高額所得者が含まれているのも事実でしょう。
  
 しかしながら、9割以上の弁護士の所得を補足している国税庁の統計で、年間所得100万円以下の弁護士が実に2割も存在しているのが現在の弁護士の状況なのです。
 
 「高齢になり仕事ができなくなったから」、或いは、「健康を害したから」といった理由が存在しない、働き盛りの弁護士であるにもかかわらず、弁護士資格を自ら返上する弁護士は毎年1人や2人といった人数ではありません。

 全体的な弁護士の平均所得や所得中位数も右肩下がりの下降傾向が続いています。

 「勉強会には参加するが、懇親会の会費が払えないので、懇親会には参加しません。」と公言しておられる弁護士もいます。

 私が初めて日弁連の給費制対策本部に参加した際、若手弁護士がこぞって「私は、正義を実現し、弱い人を助ける弁護士の職業に憧れて弁護士になりました。しかし、私の『奨学金』という名の借金は、700万です。」「私は900万円です。」「否。私の借金は1000万円を超えています。」等々参加した、ほぼ全員の若手弁護士が借金の額を競うような発言をしておられ、法科大学院を経る必要のなかった我々中堅弁護士は皆一様に驚いていました。

 こういった情報は、日弁連会長のところには届かないのでしょうか。

 「武士は食わねど高楊枝」と言います。
 インターネット上等や親しくない人に対して経済的困窮を表明する弁護士はほぼ皆無に近いでしょう。
 
 もしかしたら、本当に経済的に大変な状況の(若手)弁護士の話は届かなかったのかもしれません。
 
 しかし、仮に、このような情報が届かないとしても、様々な統計結果等々が出ているのですから、非常に恵まれた境遇にある弁護士を基準に考えるのではなく、困っている弁護士の方に思いを馳せ、想像力を働かせて制度設計を考えるのが弁護士であり、為政者であると私は思います。

 

  
 
 

pagetop