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法曹人口問題の現状と課題

2017.11.14

 

 昨日(11月13日)、埼玉弁護士会の有志の会合によんでいただき、「法曹人口問題の現状と課題」というテーマでお話しをさせていただきました。

 私が話すばかりだと聞いている方は退屈だと思い、後半は、会場に来られている弁護士からご質問やご意見を頂戴しました。

 その中で伺ったことなので、真偽のほどは確認できていないのですが、現在の日弁連会長が「全世界の弁護士の売り上げは7兆円なのですよ。日本の弁護士の売り上げは、その1%に過ぎない。日本の弁護士がもっと仕事を取ってくればよいのです。」旨の発言をしていることを伺いました。

 私は、その話を聞いたとき、その話をされた方には申し訳ないのですが、「妄言にもほどがある。まさか日弁連の会長ともあろう方がそのような発言をするはずがない。」とにわかには信じられませんでした。

 もし、その発言が本当だとしたら、「若手(弁護士)は生活が苦しい。今弁護士になっても食えないというような話が当たり前のように語られますよね。それは大変だと当の若手に聞き取り調査をしても、僕の周りにはそんな弁護士はいませんという返答ばかりなんですよ(笑)」といった前日弁連会長以上の現実離れした発言だと思います。

 司法制度どころか、文化も言語も常識も異なる異文化、異国の司法需要に日本の弁護士がどのようにしてアクセスできるというのでしょうか。そんなに簡単に世界の仕事を取ってくることができるはずがありません。仮にできるとして、そのようなことが可能なのは、きわめて一部の渉外弁護士であり、渉外弁護士は経済的に困窮していません。もっと言えば、自由競争になれば、欧米諸国を見ればわかるとおり、外国の弁護士に浸食され、自国の弁護士は潰されるのがオチだと思います。
 また、そんなことができるくらいなら、現在のように、多くの弁護士が経済的に逼迫したり等していないでしょう。多くの弁護士が簡単に言えるほど容易なことを行わずに手をこまねいて経済的基盤を失っている愚かな弁護士とでもいうのでしょうか。
 
 昨日の埼玉の勉強会でもお話しをさせていただいたのですが、国税庁の統計資料(下記添付資料参照)では、年間所得70万円以下の弁護士が毎年4000人から5000人存在します。

 また、同資料では、弁護士の人数が毎年2000人近く増えているのに、申告納税額のある弁護士は、1万人前後と横ばいで増えていません。
 確定申告をした弁護士の割合は、2008年の93.7%から2015年の83.3%と7年で1割も減っています。

 他方、還付申告をした弁護士の数は、右肩上がりで増えており、2008年には1万1,604人だったのが、2015年には1万9,176人とほぼ倍増しています。
 
 確かに、年間所得70万以下の弁護士数自体は2010年の5,818人から増えておらず、むしろ2015年には4,435人と1000人減っており、年間所得70万円以下の弁護士の数だけを見ると弁護士の経済状況も何とか下げ止まっているようにも見えます。

 しかしながら、確定申告をする人は、所得が多く申告納税額のある納税義務者か、あるいは、所得は低いが還付を受けることのできる人でしょう。
 
 そうすると、毎年、所得が低く、還付も受けられない場合には、確定申告をやめることになると思います。
 
 だからこそ還付申請をした弁護士が2008年から2015年までの7年間でほぼ倍増しているのにもかかわらず、確定申告をする弁護士の割合が減り続けているのだと思います。

 「パンがなければお菓子を食べればよい」との発言で有名なマリーアントワネット(実際にはマリーアントワネットの発言ではないとの説有)同様、浮世離れしたトップは、その世界を破滅に追いやるだけのように感じるのは私だけでしょうか。

添付資料添付資料を見る(PDF: 141 Kbyte)

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